188 |
子日わく、泰伯は其れ至徳と謂うべきのみ。三たび天下を以て譲る。民得て称する無し。 |
189 |
子日わく、恭にして礼無ければ則ち労す。慎にして礼無ければ則ち葸す。勇にして礼無ければ則ち乱す。直にして礼無ければ則ち絞す。君子、親に篤ければ、則ち民仁に興る。故舊遺れざれば、則ち民偸からず。 |
190 |
曽子、疾有り。門弟子を召して曰わく、予が足を啓け、予が手を啓け。詩に云う、戦々兢々として深淵に臨むが如く、薄氷を履むが如しと。而今よりして後、吾免るるを知るかな、小子。 |
191 |
曽子、疾有り。孟敬子之を問う。曽子言いて日わく、鳥の将に死なんとするとき、其の鳴くや哀し。人の将に死なんとするとき、其の言うや善し。君子道に貴ぶ所の者三。容貌を動かして、斯に暴慢に遠ざかり、顔色を正しくして、斯に信に近づき、辞気を出して、斯に鄙倍に遠ざかる、籩豆の事は則ち有司存す。 |
192 |
曽子日わく、能を以て不能に問い、多きを以て寡に問い、有れども無きが若く、実つれども虚しきが若く、犯されて校いず。昔者、吾が友嘗て斯に従事せり。 |
193 |
曽子日わく、以て六尺の孤を託すべく、以て百里の命を寄すべく、大節に臨んで奪うべからざるなり。君子人か、君子人なり。 |
194 |
曽子日わく、士は以て弘毅ならざるべからず。任重くして道遠し。仁以て己が任と為す、亦重からずや、死して後己む。亦遠からずや。 |
195 |
子日わく、詩に興り、礼に立ち、楽に成る。 |
196 |
子日わく、民は之に由らしむべし。之を知らしむべからず。 |
197 |
子日わく、勇を好みて貧を疾めば乱る。人にして不仁なる、之を疾むこと甚しければ乱る。 |
198 |
子日わく、如し周公の才の美有りとも、驕且つ吝ならしめば、其の余は観るに足らざるのみ。 |
199 |
子日わく、三年学びて、穀に至らざるは、得易からざるなり。 |
200 |
子日わく篤く信じて学を好み、死を守りて道を善くす。危邦には入らず、乱邦には居らず。天下道有れば則ち見れ、道無ければ則ち隠る。邦道有るに、貧しくして且つ賤しきは恥なり。邦道無きに、富み且つ貴きは恥なり。 |
201 |
子日わく、其の位に在らざれば、其の政を謀らず。 |
202 |
子日わく、師摯の始、関雎の乱、洋洋乎として耳に盈てるかな。 |
203 |
子日わく、狂にして直ならず。侗にして愿ならず、悾悾にして信ならずんば、吾は之を知らず。 |
204 |
子日わく、学は及ばざるが如くするも、猶之を失わんことを恐る。 |
205 |
子日わく、巍巍乎たり。舜・禹の天下を有てるや。而して与らず。 |
206 |
子日わく、大いなるかな堯の君たるや、巍巍乎として、唯天を大いなりと為す。唯堯之に則る。蕩蕩乎として民能く名づくること無し。巍巍乎として其れ成功有り。煥乎として其れ文章有り。 |
207 |
舜、臣五人有り、而して天下治まる。武王日わく、予に乱臣十人有り。孔子日わく、才難しと、其れ然らずや。唐虞の際、斯に於て盛と為す。婦人有り。九人のみ。天下を三分して其の二を有ち、以て殷に服事す。周の徳は、其れ至徳と謂うべきのみ。 |
208 |
子日わく、禹は吾間然すること無し。飲食を菲くして孝を鬼神に致し、衣服を悪しくして美を黻冕に致し、宮室を卑しくして力を溝洫に尽す。禹は吾間然すること無し。 |