衛靈公第十五 413

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〔原文〕
子曰、吾之於人也、誰毀誰譽。如有所譽者、其有所試矣。
斯民也、三代之所以直道而行也。

〔読み下し〕
()(のたま)わく、(われ)(ひと)()けるや、(だれ)をか(そし)(だれ)をか()めん。()()むる(ところ)(もの)()らば、()(こころ)むる(ところ)()らん。()(たみ)や、三代(さんだい)直道(ちょくどう)にして(おこな)所以(ゆえん)り。

〔通釈〕
孔子云う、「私はどうしてみだりに人を貶(けな)したり誉めたりできようか。もし誉める所があるとすれば、充分吟味した上でのことだ。今の時代の人達は、夏・殷・周三代の直系の子孫であって、元来皆善良な血筋を受け継いで精一杯生きているのだから、無闇に貶したり誉めたりするべきではない」と。

〔解説〕
本章は元は憲問第十四373章「子貢人を方(たくら)ぶ。・・・」の次章にあったものではないかと思います。前にも述べましたが、子貢は人を厳しく批評する癖がありましたから、「無闇に人を貶したり誉めたりするものではない!」と、孔子に叱られたのは一度や二度ではないでしょう。

後漢時代に紙が発明される迄は、木簡や竹簡に文字を書き綴っておりましたから、伝承の途中で憲問から抜け落ちて、ここに紛れ込んでしまった、所謂錯簡ですね。そう思って読んでみれば、なる程と納得出来るのではないでしょうか?

読んでみますか?「子貢人を方(たくら)ぶ。子日わく、賜や賢なるかな。夫(そ)れ我は則ち暇(いとま)あらず」→「子日わく、吾の人に於けるや、誰をか毀り誰をか誉めん。如し誉むる所の者有らば、其れ試むる所有らん。斯の民や、三代の直道にして行う所以なり」と。どうですか?スッキリしたでしょう。

〔子供論語 意訳〕
孔子(こうし)(さま)がおっしゃった、「(わたし)はむやみに(ひと)をけなしたり()めたりはしない。()めることは時々(ときどき)るが、それはよく(たし)かめて納得(なっとく)した(うえ)でのことだ。なぜかというと、(ひと)はみな(かみ)()だからなんだね。神様(かみさま)をけなしたり()めたりする(ひと)はいないだろう?」と。

〔親御さんへ〕
人を貶すのは良くないけれど、どうして孔子は無闇に誉めるものではない!誉めるなら誉めるに値するかどうかを充分吟味してからやれ!と云うのでしょうか?皆さんは「誉め殺し」という言葉をご存知でしょうか?誉めて相手をダメにすることを云いますが、本気で相手をダメにしようと思うなら、叱るよりも誉めた方が確実にダメになるんです。

誉めて誉めて誉めちぎって有頂天にさせると、大概転落してしまう。これは「兵法三十六計」にもちゃんとありまして、ゴマすってヨイショして足元をすくう「上屋(じょうおく)抽梯(ちゅうてい)(屋に上げて梯(はしご)を抽(はず)す」心理作戦として用いられる。

人は誹(そし)られたり批判されたりした時は、反省すべき所は反省し、謂われなきことに関しては反論できるけれども、誉められた時は全くに無防備無警戒です。反省もできなければ、反論もできません。せいぜい謙遜するのが精一杯でしょう。つまり、ここ(誉められた時)に人間心理の盲点、増上慢という毒が潜んでいる訳です。

一頃「子供は叱るより誉めて育てろ!」というのが流行りましたけれども、その結果がニートの大量生産につながった訳ですね。困るね、教育評論家のいい加減な言説は。あれは「子供は叱るより誉めて育てろ!」の後に、「子供をダメにしたければ!!」というワンフレーズが伏せられていたんですよ、本当は。

誉められるだけで叱られたことのない子は、浮ついた子に育ちます。大教育家の孔子がそこを見逃す筈はありません、だから「無闇に誉めるものではない!」と云ったんです。前途ある若者をダメにしてしまうから。もしかすると、孔子の時代も「子弟は誉めて育てろ!」などと云う無責任な言説がもてはやされていたのかも知れません。孔子学園を真似た私塾が乱立した時代で、「百家争鳴」前夜でしたからね、孔子晩年は。

(そし)るのは良くないけれども、子供や生徒をきちんと叱れない親や教師は、ダメ親・ダメ教師です!子供の権利尊重(ありのままの自分でいる権利・自分で決める権利・参加する権利等々)を唱え、高度な思考力も判断力も持たない子供達をイデオロギーの食い物にして、「子供の権利条例」を作ろうなどと云うのは、ダメ人間のすることです。

あれは、「子供をダメにする権利条例」です!子供を経験したことのない大人は一人もいない。自分が123才だった頃のことを振り返ってみれば、高度な思考力も判断力も持ち合わせていなかったこと位、誰にも分かるでしょう!? 「イ〜ヤ!自分は既に持ち合わせていた!」と言い張るのなら、その後あなたは何も進化していないってことになるでしょう。コトナ(大人子供)ってことでしょう?

「子供の権利条例」や「男女共同参画推進条例」なるものを孔子が知ったら、腰を抜かすんじゃないでしょうか?否、烈火の如く怒るかも知れない、「君達日本人は子供をダメにする気か!?女も男もダメにする気か!?人間をダメにする気か!?」と。

ここ迄論語を学んで来られた皆さんならば、「子供の権利条例」も「男女共同参画推進条例」も、猛毒を持った地獄思想であること位、とっくにお見通しでしょう。いや、論語など学んでいなくても、日本人として普通の感性を持った人なら、誰でも分かる筈なんです。
 

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