〔原文〕
子曰、無爲而治者、其舜也與。夫何爲哉。恭己正南面而已矣。
〔読み下し〕
子日わく、無為にして治る者は、其れ舜なるか。夫れ何をか為すや。己を恭しくして正しく南面するのみ。
〔通釈〕
孔子云う、「何も特別なことはしなくとも、よく天下を治めた人物と云えば恐らく舜だろうな。舜は作為を用いず、ただ恭しく居住まいを正して南面するのみであったという」と。
〔解説〕
南面とは、古代の中国では君主は南に面して座したことから、天子となって国を治めることを云う。舜は無為無策で過ごしていたという訳ではありません。泰伯第八206章に「舜、臣五人有り、而して天下治まる」とあるように、有能な人材をどしどし登用して存分に生かしきった訳ですね。賢臣の中でもとりわけ優れた下臣に、兎(治水)・棄(農事)・契(文教)・皐陶(司法)・伯益(林業)の五人がおりました。この五人のうち治水を担当した兎が舜の禅譲を受けて、夏を興すことになります。
〔子供論語 意訳〕
孔子様がおっしゃった、「なんにもパフォーマンスなどしなくとも、国民から慕われた王様に舜という人がいた。舜が国民の前に姿をあらわすだけで、よく国が治まったという。だから舜のことを聖天子というんだよ」と。
〔親御さんへ〕
堯や舜のことを「聖天子」と云います。聖天子とは、聖なる使命を授かった天(神)の子の意。キリスト教で云う「天使」は神の使者の意ですから、天子も天使も似たようなものと思って良いでしょう。
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