公冶長第五 106

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原文          作成日 2004年(平成16年)2月から3月
子路有聞、未之能行、唯恐有聞。
  
〔 読み下し 〕
()()は、()くこと()りて、(いま)(これ)(おこな)うこと(あた)わざれば、(ただ)()()らんことを(おそ)る。
     
〔 通釈 〕
子路は、師から教わったことを実践しようと心掛けておったので、まだよく実践できないうちは、次の新しい教えを聞くことを恐れた。
   
〔 解説 〕

顔淵第十二に、「片言(へんげん)以て獄(うったえ)を折(さだ)むべき者は、其れ由なるか。子路は諾(だく)を宿(とど)むる無し」とあるように、子路は即断・即決・即行を身上とした男ですが、孔子に「由や!」と呼ばれたらどうしよう?と思っていた所に、「由や!」呼ばれたものですから、ビクッ!として首をすくめている様子が目に浮かぶようですね。子路のこういう所が、孔子には何とも可愛いかったのでしょう。前にも云いましたが、純真で飾らないナイスガイの子路を、孔子は最も愛していたんですよ。
   

〔 子供論語  意訳 〕
弟子(でし)()()は、孔子(こうし)(さま)から(おそ)わったことを実践(じっせん)しようと(つね)(こころ)()けていたので、(ひと)つのことを充分(じゅうぶん)マスターできないうちは、(つぎ)課題(かだい)()くことを(こわ)がった。
 
〔 親御さんへ 〕

子路はこういうところがあったんですね。前に、孔子と出会う前の子路はヤクザ者であったと申しました。孔子を懲らしめてやろうと乗り込んではみたものの、会った途端「回心(えしん)」してしまう。

キリスト教徒を弾圧しようとダマスカスへ向かった厳格なユダヤ教徒のパウロが、道中、復活したイエスキリストに出会って回心し、生涯をキリスト教の伝道にささげた「パウロの回心」とそっくりですね。偉大な指導者というものは、一瞬にして回心させてしまうパワーを持っているもののようです。

不登校児や高校中退者の為に「師友塾」を開いてから今年で30年になるという、塾長の大越俊夫先生は、その著書「6000人を一瞬で変えたひと言」の中で、「変わる人は一秒で変わる。変わらない人は十年かけても二十年かけても変わらない」と述べ、更に「百知って何もしないより、三知ってその三つを実践する方がいい!」と語っておられる。「子路の回心・子路の
実践」も、要はこういうことなんですね。興味のある方は読んでみて下さい。

*サンマーク出版 大越俊夫著 「6000人を一瞬で変えたひと言」1200円
  

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