為政第二 019

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原文                   作成日 2003年(平成15年)5月から7月

子曰、道之以政、齊之以刑、民免而無恥。道之以徳、齊之以禮、有恥且格
 

〔 読み下し 〕
()(のたま)わく(これ)(みちび)くに(せい)(もっ)てし、(これ)(ととの)うるに(けい)(もっ)てすれば、(たみ)(まぬが)れて(はじ)ずること()し。(これ)(みちび)くに(とく)(もっ)てし、(これ)(ととの)うるに(れい)(もっ)てすれば、()ずる()りて()(ただ)し。
 
〔 通釈 〕
孔子云う、「人民を統治するのに、政治権力を乱用したり、従わない場合には刑罰を以て脅したりすれば、人民は捕まりさえしなければ良しとして、自分の悪事を恥と思わないようになる。徳治を以て人民を導き、礼儀礼節を重んじて統治すれば、人民は自ずから是非善悪の判断がつくようになって、良心に恥じるようなことはしなくなるものだ」と。
 
〔 解説 〕

「民免れて恥ずること無し」とは、罪の意識を無くしてしまうことですから、人としてこれ程恐ろしいことはありません。捕まりさえしなければ、詐欺・略奪・暴行等何でも有りということですからね。

フセイン政権が倒れた途端、何千年も前からの国宝はおろか、病院の医療機器まで略奪されて、患者が行き場を失っているシーンが何度も報道されておりましたが、こっそり盗んでいるのかと思いきや、女子供も一緒になって、白昼堂々とやっている。しかも、TVカメラに向かってVサインまで出して「ヤッター!」というポーズをとっている。 ああ云う場面を見てしまいますと、今まで「フセインの独裁政権下で、イラク国民は苦しんでいるんだろうな?かわいそうだな?」という同情心は、一遍に吹っ飛んでしまいます。

女性の某評論家が、「貧しさ故の行為で、責められませんね」と、トンチンカンな解説をしておりましたが、イラクはアフガニスタンと違い、一人当りGDPが3,000ドル以上あって、決して貧しい国ではありません。中国の何倍も豊かな国ですし、フセインは北朝鮮のような餓死者など、出しておりません。あんな場面を見れば、世界中の人が「イラク人とは罪の意識を持たない、恥も外聞もない民族なのだろうか!?」と思ったのではないでしょうか?貧しくもないのに平気で略奪をやらかすのですから。

アラーの神が、酒を禁じ、日に五回の礼拝と、年一回の断食と、メッカへの巡礼を命じたのは、イスラム教徒の目を、年がら年中唯一絶対の神に釘付けにしておいて、略奪・暴行をやらかす暇を与えない為の配慮だったのかも知れませんね、本当の所は。100%人民の自由意思に任せておいたら、シッチャカメッチャカになってしまうのではないかと心配したのでしょう
アラーは。
 

〔 一言メッセージ 〕
『罪の意識を失えば羞恥心を失い、羞恥心を失えば礼節を失う』
 
〔 子供論語  意訳 〕
孔子(こうし)(さま)がおっしゃった、「(ちょう)自分(じぶん)勝手(かって)暴力的(ぼうりょくてき)だと、(した)(ひと)はバレなければ()いとズル(かしこ)くなって、うそをついても()ずかしいと(かん)じなくなってしまう。(ちょう)公明(こうめい)正大(せいだい)公平(こうへい)でえこひいきしない)で礼儀(れいぎ)(ただ)しくリードすれば、自然(しぜん)(した)(ひと)()()しのけじめがついて、(ひと)にも自分(じぶん)にももうそがつけなくなるものだ」と。
 
〔 親御さんへ 〕

人が百人居れば百通りの言い分と正義があり、千人居れば千通りの言い分と正義があると云われます。正義と正義が衝突した時、そこに争いが生じます。義は仁あっての義、仁に根ざした義である!と、<序>述べましたが、義が仁の根から断ち切られて独り歩きしたらどうなるか?と云えば、正義の為には手段を選ばずとなって、暴虐無惨を極めることとなってしまいます。

正義は本来妥協を許しませんから、義が仁の根っこから切り離されて、単独で闊歩し出すと、「相剋排他」にならざるを得ないんですね。そこで、仁から断ち切られた義は、自己を正当化する為に仲間を探しますが、仁に根ざした礼・仁に根ざした智・仁に根ざした信からは、相手にされません。寄って来るのは、礼は礼でも「虚礼」・智は智でも「奸智」・信は信でも「狂信」と
いう、これも仁から断ち切られた浮遊霊のようなものばかりです。

虚礼は人民に絶対服従を強い・奸智は人民に密告を強い・狂信は人民に殉教を強いる。つまり、選択の自由も、言論の自由も、思想信条の自由も一切認めない。これが独裁者というものの正体なんですね。独裁者は本当は臆病者なんですよ。臆病だからこそああやって虚勢を張らざるを得ないんですね、金正日のように。人民に正体がバレたら一大事です。ルーマニアのチャウシェスクのようになぶり殺しにされてしまいますからね。
 

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