〔原文〕
子夏日、百工居肆以成其事、君子學以致其道。
〔読み下し〕
子夏曰わく、百工肆に居て以て其の事を成す。君子、学びて以て其の道を致す。
〔新論語 通釈〕
子夏云う、「職人が仕事場で自分の仕事を成し遂げるように、君達は真理を学んで自らの使命を全うしなさい」と。
〔解説〕
「其道(きどう)・其の道」が何を指すのか?前段の職人の場合と同じく「成其道・其の道を成す」であれば、仕事や任務を全うすると解して良いと思うのですが、原文は「致其道・其の道を致す」となっている。致すとは極致、極限まで至らせる・命を捧げ尽くしてやり遂げるの意ですから、極めて重い言葉です。人生の究極の目的、命を捧げ尽くしてやり遂げる課題といえば、自らに与えられた使命を全うする以外にはありません。よって「其の道」を「自らの使命」と解した次第です。
以前合同例会で、「人間がこの世に生まれてくる時には全員が二つの使命を持って来る。一は魂の進化を遂げるという万人共通の使命。二はこの魂進化を遂げるために設定して来る、自らのレッスンとしての個別の使命。だから、何の為に生まれて来るのか?と問われたならば、魂進化を遂げるため!
何の為に生きるのか?と問われたならば、自分の使命を果たす為!と、諸君は即座に答えられなければならんのだ!!」と話したことがあります。
実は、この二つ以外にはないんです、人間がこの世に生まれてくる目的は。地位を得るためでも、財産を得るためでも、名声を得るためでも、長生きするためでもないんです。魂は永遠不滅、死ぬことができないのですから。
前回の特別講義で、王陽明の「伝習録」の四句教から「善無く悪無きは是れ心の体、善有り悪有るは是れ意の動‥‥。善も悪も無いのが心の本体、善だ悪だと弁別するのは思考の作用」を紹介しましたが、もしどうしても悪というものを定義しろ!と云うなら、自らの魂進化を拒んだり、他人の魂進化を妨げたりすること、つまり、自分で自分の魂を退化・堕落させると同時に、他人の魂をも退化・堕落させるように仕向けること、これを以て最悪と云う他はないでしょう。ならば最善はどうか?と云えば、自分で自分の魂の進化・成長に努めると同時に、他人の魂をも進化・成長に導くことと云えるでしょう。
だから子夏は云ったんですね、「真理を学んで自らの使命を全うしなさい!」と。使命の中には必ず「人のお役に立つ」・「奉仕する」というテーマが組み込まれている。「自分さえ良ければ人はどうなろうとかまわない!」などというテーマはありません。そういうテーマを持っている魂は、人間として生まれて来ることができません。生まれて来ても、魂を進化・成長させることができませんからね、自分のことしか考えられないような人は。
人間は、血縁・地縁・人縁・時縁・神縁の関係性の中でしか生きられません。この関係から離脱して、ポツンと分離孤立して生きられる人は一人もおりません。そもそも血縁がなかったら、生まれて来れないでしょう!?
ですから、自らの使命を全うして行く過程で、必ず周囲に何らかの影響を与えている訳です、すべての人が。自ら魂の進化・成長に努めることは、他人の魂の進化・成長にも影響を与えているんですね。自他一如なのだから、人様のことは余り心配しないで、しっかりと自分の使命を果たして行きなさい。(と、自らに言い聞かせる私なのでした)
〔子供論語 意訳〕
子夏が、「多くの人達が一所懸命仕事をして自分の使命を果たしているように、君達は学問をして学生の務めを果たしなさい」と云った。
〔親御さんへ〕
現在のアナログ放送は2011年からデジタル放送に変わるため、テレビを買い換えなければならないそうですが、機械はそれで良いかもしれないが、人間の頭までデジタル式になったら大変なことになりますね。
局部をピンポイントで細かく見るにはデジタル頭で良いでしょうが、全体を見るには連続体として捉えるアナログ頭でないと、判断を誤ってしまいます。宇宙を部品の集合体と考えていた中世の科学認識、機械仕掛けの宇宙論のようなものです。
サブプライム問題だって、金融工学などと称して、局部しか見れないデジタル頭の世間知らずが引き起こしたんでしょ?
不動産は上がったり下がったり変動するものですが、永久に上がり続ける定常のものとして、貸してはいけない人・返済できる見込みのない人に貸し付ける仕組みを考え出した。
最初の2年間は年利5%の利息だけ払えば良い。ここまでは何とか払える。3年目から年利は10%にはね上がり、元本の返済も始まる。初めから返済の見込みがないと分かっている人に貸し付けた訳だから、返済が滞ったと同時に担保に取った不動産を巻き上げて転売する。
不動産が上がり続けていれば、2年分の利息と転売による利ざやの両方で利益を得ることができるが、もし受け取った利息以上に不動産が値下がりしていたら、損失を蒙ることになるのは誰にも分かる。リスクが大きすぎるから、こんなものをそのまま証券化しても誰も買わない。ここまでは誰でも分かる。
ここから先がデジタル頭の面目躍如たる所で、ならばリスクの大きなものと小さなものとをごちゃ混ぜにパッケージして、何が何やら訳の分からないようにしてから売り出せばいいじゃないか!となった。格付会社も見破れなかった。これがこれから大惨事を引き起こすことになるであろう「CDO(資産担保証券)」。
堀紘一さんはCDOを「鳥インフルエンザの肉が混ざったミンチ肉」と云っている。サブプライムローンを考案した人物は、「理論的には間違っていない!」と強弁しているそうですが、これって「手術は成功しました。しかし患者は死にました」といっているようなものでしょう。返済の見込みがない人に、金を貸し付ける仕組みを考案しよう!などという考え方そのものが間違っていたんでしょ!?
0か1か?善か悪か?損か得か?の二元論思考は、一時的・部分的・末梢的な物事には向いていても、長期的・全体的・根本的な物事には向かないんですね。受験秀才・学校秀才を待ち構えている陥穽(かんせい)がこれですね。
読売新聞が行なった「中央官庁の官僚を信頼しているかどうか?」の全国世論調査で、74%の国民が「信頼していない」と答えたと平成21年3月26日の記事が伝えておりました。中央官庁の官僚といえば、みな受験秀才・学校秀才でしょ?白洲次郎のような人物がいたら面白いんだけどなあ!?
三国志に「識時務者在俊傑(時務を識る者は俊傑に在り・時代の趨勢を読み抜いて時局に対処できる者は、余程の傑物でなければならぬ)」とありますが、知識・見識・胆識を備えた官僚が欲しいねえ!日本に。
覚識も望みたい所だけれども、これは政治家に求めるべきでしょう。間もなくこの文明が終わることを知っている政治家はどれくらいいるのだろうか‥?サブプライムローン問題に端を発した金融恐慌など、序曲に過ぎないというのに。不自然・不調和・不条理・不人情な物事は、この星ではもう存在できなくなります。勿論、不自然・不調和・不条理・不人情なことを、思い・語り・為している人も。
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