〔原文〕
子張問仁於孔子、孔子日、能行五者於天下為仁矣。請問之。日、
恭寛信敏恵。恭則不侮、寛則得衆、信則人任焉、敏則有功、惠則足以使人。
〔読み下し〕
子張、仁を孔子に問う。孔子日わく、能く五つの者を天下に行うを仁と為す。之を請い問う。日わく、恭・寛・信・敏・恵なり。恭なれば則ち侮られず、寛なれば則ち衆を得、信なれば則ち人任じ、敏なれば則ち功あり、恵なれば則ち以て人を使うに足る。
〔新論語 通釈〕
子張が、仁(人望)とはどういうことかと孔子に問うた。孔子は、「五つのことを、何時でも・何処でも・誰に対しても実践すれば人望を得ることができよう」と答えた。子張は、「どうか詳しくお教え下さい」と云った。孔子は、「恭(うやうやしい)・寛(寛容)・信(言を違えない)・敏(俊敏)・恵(恵み深い)の五つがそれだ。恭しければ人から侮られることがない。寛容であれば人がついて来る。言を違えなければ人に信用される。俊敏であれば成果が上がる。恵み深ければ人を生かして使うことができる」と答えた。
〔解説〕
これは至言です!仕事柄いろんな会社の幹部の方とお会いする機会がありますが、どうしてこの人は人望がないのだろうか?仕事は出来るのに!?と残念に思うことが多々あります。よく考えてみると、孔子がここで云う恭・寛・信・敏・恵の五つのうち、必ずどれかが欠けています。最近特に多いのが「恵」ではないでしょうか?恵み深いどころか、ケチな人間が多過ぎます。昔は上司や先輩が自腹を切って部下や後輩におごってくれたものですが(大した月給も貰っていないのに)、今はあまり見掛けなくなりました。これははっきりと申し上げておきますが、ケチ(吝嗇)な人間は人の上には立てられません、どんなに仕事が出来ても。
子張は頭のいい男でしたから、「どうして俺は人望がないのだろうか?」と悩んでいたのかも知れません、衛霊公第十五394章で「思うことが行なわれるようにするには、どうしたら良いでしょうか?」と問い、孔子は「言忠信、行篤敬(言うことは誠実で言を違えないこと。やることは篤実で慎み深いこと)」と答えている。
子張は能力はあるけれども、どうも「真心(誠実)」や「人情味(篤実)」に欠けていたようです。同世代の弟子達もそこを見抜いていたようで、子游は、「吾が友張や、能く難きを為すなり。然れども未だ仁ならず」、曽子は、「堂々たるかな張や、ともに並びて仁を為し難し」と子張を評しています。
〔子供論語 意訳〕
弟子の子張が「どうしたら人から頼りにされる人間になれるでしょうか?」と質問した。孔子様は、「次の五つのことを実践してみなさい。
一、
礼儀正しく丁寧であること。
二、
人を許して受け入れること。
三、
約束したことは守ること。
四、
テキパキと行動すること。
五、惜しみなく人に分け与えること。
礼儀正しければ、人からバカにされることがない。人を許し受け入れれば、多くの人がついて来る。約束を守れば、人から信用される。テキパキと行動すれば、成績が上がる。惜しみなく人に分け与えれば、黙っていても人が協力してくれる。分かったね!」とおっしゃった。
〔親御さんへ〕
これなどは大書して子供部屋に貼っておいたらいいのではないでしょうか。
一 礼儀正しく丁寧に!いい加減でぞんざいはいけません!!「恭」
二 人の失敗は許しなさい!責め立ててはいけません!!「寛」
三 約束した事は守りなさい!自分勝手な都合で破ってはいけません!!「信」
四 テキパキ・ハキハキしなさい!ノロノロ・グズグズはいけません!!「敏」
五 気前よく人に分け与えなさい!ケチケチしてはいけません!!「恵」
子供部屋のみならず、居間に貼って家族全員が見られるようにした方が良いかも知れませんね、親もいい加減なことができなくなりますから。下段に「子供論語より」と書いておけば、人に見られても恥ずかしくないでしょう。「ほう?論語にこんなことが書いてあるんですか?」と見直されますよ。
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