〔原文〕
闕黨童子將命。或問之曰、益者與。子曰、吾見其居於位也。見其先生竝行也。
非求益者也。欲速成者也。
〔読み下し〕
闕党の童子、命を将う。或ひと之を問うて曰わく、益する者か。子日わく、吾其の位に居るを見るなり。其の先生と並び行くを見るなり。益を求むる者に非ざるなり。速やかに成らんと欲する者なり。
〔通釈〕
闕という村出身の少年が孔家の取次役をやっていた。ある人がこれを見て、「余程見所のある少年なのですか?」と尋ねた。孔子は、「いやそうじゃないんです。あの子は、大人が座る席に座ってみたり、先輩の後に従わず並んで歩いてみたりと、無作法な所が見受けられるものですから、行儀見習のつもりで取次をやらせているのですよ。見所があるからという訳ではないんです。早く大人の仲間入りがしたいという気持も分からん訳ではないが、速成では何事も身に付きませんからね」と答えた。
〔解説〕
「速成」なる成語の出典がここ。速成醸造・速成醤油など、従来からの手間暇かけた製法によらず、化学的方法によって短期間で簡便に仕上げてしまう製法を云いますが、速成モノはやはり味が落ちる。物でさえそうですから、ましてや人間ならば尚更のこと、速成で人物の涵養などできる訳がありません。
先日、当会初代会長である椿さんと話しをしておりまして、しみじみと語っておられたことは、「十五年も論語をやって来て、何も身に付いていないんじゃないか?ちっとも代わり映えしないんじゃないか?と思っていたが、ふと気が付いてみると、語る言葉・書く文章の中に無意識に論語の精神や文言が紛れ込んでいて、自分でもビックリすることがある。
これは!?と思ったら、最低十年はじっくりやってみないと、何にもならんもんですなあ。これがダメならあれがある!あれがダメならそれがある!とつまみ食いしている人間は、一向モノになりませんな。わずか数十年の寿命で、そうあれもこれも出来る訳がない。一つでいい!命懸けでやるものは。そう思って幹部諸君に遺言を書きましたよ」と云って見せてくれました。73才悟りの境地が述べられていて、実に立派な遺言です。皆さんも機会があったら一度見せてもらいなさい。
〔子供論語 意訳〕
闕という村出身の少年が、孔子学園の案内係をやっていた。これを見たある人が、「よほど優秀な生徒さんなんでしょうね?」と質問した。孔子様は、「いいえ、あの子は礼儀知らずの所があるので、まず基本動作を身につけさせるために案内係をやらせているのです。言葉づかいや態度に失礼なことがあったら、遠慮せず叱って下さい。礼儀作法は若いうちほど身につきますから」とおっしゃった。
〔親御さんへ〕
鉄は熱いうちに打て!と云いますが、ある時期を失してしまうと、一生獲得できない資質の一つに「矜恃(きょうじ)」・独立自尊の気概があります。これは大抵15才位が限界だろうと云われている。丁度中学3年迄の義務教育期間がこれに当たります。いい意味での意地とかプライドの素地が形成される訳ですね、この期間に。この間、親の過保護・過干渉の下で育てられた子は、自分で意志決定の出来ない人間になると云われます。所謂依存心の塊になってしまう。
近年、学校にも行かず就職もせず、いい年をして親の世話になっているニートが社会問題になっておりますが、ニートは親の過干渉が原因です。これは一生直らない、依存症は。それを無理矢理直そうとするから、却っておかしくしてしまう、諦めなさい直らないから。直らないが対処法ならある、ちゃんと本人が対処して行ける。
一は、動物好きの子は、牧場に住み込みで家畜の世話をする仕事をやらせてみる。牧場主には依存できても、動物には依存できない、つまり、自分が世話をする立場になる訳で、三年もすると逞しくなるそうです。親元に帰すと又元に戻ってダメになってしまうそうですから、親はその子と一緒に住むことを諦めなければなりません。親が原因でその子をダメにしたのだから、仕方ないでしょう、子供の将来を思うのならば。
二は、植物好きの子は、いい伴侶(農家の娘)を探して婿にやること。これも当然親元から離れることになるが、嫁がガッチリと保護管理すれば使いものになる。晩酌の三合も与えておけば、いい婿になります。酒が嫌いなら、毎晩可愛がってやれば良い。
つまり、一も二も自然の中でいい汗をかきながら、動物や植物を育てる仕事ならできるということですね。それを無理矢理都会に引き戻して、組織の中にはめ込もうとするから、本人は耐えられなくなってしまう。人為でダメにしてしまったものは、大自然の治癒力に委ねるしか方法はないようです。
ああ、女子のニートは心配いりません。(元々数も少ない)自己保存本能と環境適応力は男子の三倍ありますから、放っておけばそのうち一人でちゃんとやって行くようになります。問題は男子、母親に溺愛された男子です。
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