孔子が心配した通り、子路は衛で内乱に巻き込まれて非業の死を遂げる。この時子路は、衛の霊公の孫で霊公の後を継いだ出公輒(ちょう)重臣孔斟(こうかい)に仕えていたが、亡命していた出公の父カイカイが君主の座を奪還しようと攻撃に出て、父子骨肉の争いが起こる。

その結果カイカイが勝って君主となり、今度は出公が亡命してしまう。主人の孔斟(こうかい)がカイカイに捕えられてしまった為、子路は単身主人の救出に向かうが、敵に斬り殺されてしまった。

孔子73才の出来事で、子路享年64才でした。この章に登場する四人は、みな旧くからの弟子ばかりですから、当然顔回がいてもよさそうなものですが、名前がない。顔回の死後しばらくしてからの情景でしょうか。
 

子路は本当に勇敢と云えば勇敢、向う見ずと云えば向う見ずな男でありまして、孔子が心配した通り、この後衛の国で主人が仕えた君主が内乱に敗れ、敵に捕らわれた主人を救出する為に一人で斬り込んで行きますが、呆気無く殺されてしまいます。

子路は、負けるが勝ちつまり、その場は強いて争わず相手に勝ちを譲り、策を巡らしてから攻勢に転ずるというような、間怠(まだる)っこいことは、大の苦手だったんですね。

一本気で剛直な性格の人は頼もしい反面、ボキリッと折れてしまう脆さを持っている。子路のこの様な性格を知り尽くしていた孔子は、述而第七160章で、「暴虎馮河、死して悔いなき者は、吾与(とも)にせざるなり。必ずや事に臨みて懼れ、謀(はかりごと)を好みて成さん者なり。(虎と素手で格闘したり、黄河を泳いで渡ったりと無茶をやらかして、それで死んでも悔いはないというような無鉄砲の者とは、行動を共にできないな。

もし組むなら、事前に綿密な作戦計画を練って慎重にことに臨み、知略で敵を負かしてしまうような思慮深い人物だな！)」と諭していたのですが、子路の侠気(おとこぎ)は終生変わらなかったようです。負けるが勝ち・損して得取れ・禍転じて福と成すスタンスを持ちたいものですね。