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原文
〕 作成日 2005年(平成17年)3月から6月 |
子曰、苗而不秀者有矣夫。秀而不實者有矣夫。
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〔 読み下し 〕 |
子日わく、苗にして秀でざる者有り。秀でて実らざる者有り。
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〔 通釈 〕 |
孔子云う、「やっと芽が出たのに、穂にならぬものがある。せっかく穂が出たのに、実らぬものがある」と。
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〔 解説 〕 |
秀(しゅう)とは禾(か・いなほ)+及(きゅう・のびる)の会意文字で、「稲の穂がすっと伸びる」の意。転じて、抜きんでる・秀でるの意味となる。学問の修得・徳の修養を稲の穂の成育に喩えた、孔子一流の比喩ですが、何か自分のことを云われているみたいで、耳が痛いですね。
季氏第十六に「君子の三戒」というものがありまして、青年時代→壮年時代→老年時代のそれぞれに、自戒すべきことが述べられております。それによると、
青年時代は血気(体力気力)がまだ定まらないから、色欲を戒めろ!
壮年時代は血気が盛んになるから、争いごとを戒めろ!
老年時代は血気が衰えるから、金銭欲・名声欲を戒めろ!とある。
血気とは、勇気とやる気と元気と根気と捉えても良いかと思いますが、なるほどなあ!?と思わされます。
青年時代、色気がついて来ると、大抵学業が疎かになる。壮年時代、俺が俺が!とやっていると、至る所で人と衝突して敵を作ってしまう。老年時代、勇気とやる気はあっても、元気と根気が衰えて来ますから、色欲や闘争欲以外の欲、例えば、資産や名声が気になる。
本章は勉学途上の青年について語ったものと思われますから、「之を戒むること色にあり!」と云った所でしょうか。
ただ孔子は釈迦と違って、「色欲を断て!禁欲しろ!」などと、野暮なことは云いません。「程々にしろよ!」ということですね。但し、遊ぶんなら、ちゃんとお金を払って遊びなさい。タダで遊ぼうなんてケチなことは考えなさんな。タダでやろうとするから、性犯罪や性病が増えるんだよ。
人間は誰にだって色欲がある。これがなかったら人類はとうに絶滅している。色欲そのものは悪い事でも何でもない、総ての人に備わっているものです。安っぽい道徳観念で抑え込もうとするのは間違っています。
親鸞だって、何人も女がいたんでしょう?一休禅師など、開けっ広げで生々しくて、生臭坊主そのものでしょう?実はお釈迦様だってちゃんと云っているんですよ、「五陰盛苦(ごおんじょうく)」(肉体を持っていること自体に伴う燃え盛る煩悩)の中で、「異性を求めて燃え盛る煩悩に取り付かれたら、誰も逃げられない」と。
前にも述べましたように、「色欲を断て!」と云ったのは比丘(びく・修業僧)に対してであって、一般の人々に向かって云ったものではないんですね。青年諸君が、健全且つ大らかに色欲を処理できる社会システムを、作ってあげても良いんじゃないのかな?性犯罪や性病など、激減すると思うよ。
テレビ・雑誌・ビデオ等で、色欲を煽るだけ煽っておいて、イザ実行しようと思ったら「それはダメ!」ってのは、どう考えてもおかしいですよ。ダメと云うのなら、煽ること自体犯罪行為として取り締まらなければならない。そうなったら、「愛の流刑地」を連載している日本経済新聞などは勿論発売禁止、作家の渡辺淳一などはタイトル通り流刑か死罪でしょう。皆さんの中にも居るんじゃないのかな?経済欄を読む前に、まず「愛の流刑地」を読むって人が。そういう大人達が、前途洋々たる青年諸君を、安っぽい道徳観や倫理観で抑えつけちゃあいけませんな!前途は洋々だが、足元はグチャグチャってのが若者の特性なんだからね。
ちょっと脱線してしまいましたが、芽は出たが穂にならず、穂は出たが実らずというのは、勿論本人の責任であることに違いないけれども、大の大人がせっかく出た芽を摘んでしまうことも往々にしてある。優劣や勝ち負けだけで、青年諸君を決めつけてはいけません!優劣や勝ち負けよりも、真っ当で立派であることの方が人間には大事なんだから。競馬馬じゃあないんだよ、人間は!!
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〔 子供論語 意訳 〕 |
孔子様がおっしゃった、「ようやく芽を出したか!と喜んでいると、途中で伸びが止って花の咲かないものがある。やっと花が咲いてこれからが楽しみだ!と思っていると、途中でしおれて実のならないものがある。人間もこれと同じで、何ごとも途中で投げ出してしまえば、あと一歩という所で伸びが止まってしまい、中途半端な人間になってしまうんだよ。だから君達は、一度取り組んだら途中で投げ出さず、完成するまでやってみなさい!上手下手は二の次だ!」と。
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〔 親御さんへ 〕 |
これは本当に大切なことです。小さい時から、一度取り組んだらできる迄やる習慣を身に付けさせませんと、何事も半端グセがついてしまって、一向にものにならない人間に育ってしまいます。
コツコツ地道にやるというのは、確かに生まれつきの性格もありますが、それが総てではない。半分は習慣です。小さい時程躾をし易いし、習慣を身につけさせ易い。身・口・意の習慣は、大人になってからでも矯め直せないことはないけれど、大変な覚悟と強靱な忍耐力が要る。
イギリスの諺に“Strike while the iron is hot!”
「鉄は熱いうちに鍛えよ!」というものがありますが、これは本当です。冷めてから鍛えるのは骨が折れます。真に我が子を愛するのであれば、溺愛・盲愛は犯罪に等しい!熱いうちに鍛えなさい!!
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