学而第一 014

上へ


原文                             作成日 2003年(平成15年)3月から 4月
子曰、君子食無求飽、居無求安。敏於事而於言、就有道而正焉。
可謂好
也已。
 
〔 読み下し 〕
()(のたま)わく君子(くんし)(しょく)()くを(もと)むること()く、(きょ)(やす)きを(もと)むること()し。(こと)(びん)にして(げん)(つつし)み、(ゆう)(どう)()きて(ただ)す。(がく)(この)むと()うべきのみ。
 
〔 通釈 〕
孔子云う、「人の上に立つ者は、旨いものを腹一杯食べて、快適な家に住みたいなどという ことを真っ先に考えてはならん。人として為さねばならぬ事を最優先し、言葉を慎む。有徳の人物に師事して教えを受け、自分の至らぬ所を矯正して行く。こういう人こそ、真に学問好きと云って良いだろう」と。
 
〔 解説 〕
グルメもダメ!マイホームもダメ!などと云ったら楽しみがなくなるではないか!?外食産業も 住宅産業も成り立たなくなるではないか!?と思われるかも知れませんが、心配ご無用。 孔子はちゃんと云っています、「君子は」と。国のレベルで云えば国家元首、企業レベルで 云えば代表取締役がこれに当りますが、国民や社員に旨いものを腹一杯食べさせてやりたい!快適な住まいを持たせてやりたい!と真っ先に考えるか、国民や社員よりもまず自分が旨いものを腹一杯食べたい!快適な住まいが欲しい!と考えるかで、その人格には天と地程の開きが出るようです。

大昔、夏(か)という国に桀(けつ)・殷(いん)という国に紂(ちゅう)という王がおりまして、人民を 塗炭の苦しみに陥れておきながら、自らは酒池肉林のドンチャン騒ぎに明け暮れていたと 云います。桀王や紂王にそっくりの人物が、お隣の国におりますね。何と云う人でしたっけ? 金不正日という名前でしたかね?自国民を二百万人も餓死させておきながら、自らは金殿 玉楼に安居し、旨いものをたら腹食って太鼓腹の糖尿病、その上「喜び組」なる美姫(びき)を侍らせて毎晩酒宴に耽っているとか・・・。これなどはさしづめ「現代版酒池肉林」でしょう。

桀は殷の湯王に、紂は周の武王に亡ぼされておりますが、金王朝を倒すのは一体誰になりますかねえ。本来であれば、自国民自らが起ち上がって独裁者を倒し、民主政権を樹立できれば一番いいのですが、無理でしょうかね?あの国は。
 
〔 一言メッセージ 〕
『人は永らく人に長たるの地位にあると、謙虚さと素直さと慎ましさを忘れ、驕慢と強欲と虚飾に溺れてしまうものだ。だから故安岡正篤は云った、一に原理原則を教えてくれる師を持て。二に直言してくれる側近を持て。三に優れた幕賓(ばくひん)を持て』と。
 
〔 子供論語  意訳 〕
孔子(こうし)(さま)がおっしゃった、(ひと)(うえ)()(ひと)は、自分(じぶん)満足(まんぞく)優先(ゆうせん)してはならない。まず全体(ぜんたい)のことを(かんが)えて、()いと(おも)ったことはすぐ実行(じっこう)し、わがままを()わないように しなさい。(こま)ったことがあったら一人(ひとり)(なや)んでいないで、先生(せんせい)(おや)相談(そうだん)しなさい。先生(せんせい)もお(とう)さんお(かあ)さんも、みーんなそうして立派(りっぱ)大人(おとな)になって()たのだから」と。
 
〔 親御さんへ 〕
小学生の頃真剣に悩んでいたことを、中学生になってから振り返ってみると、「なんであんな事で悩んでいたんだろう?」と思ったり、中学生の頃真剣に悩んでいたことを高校生になってから「バカなことで悩んでいたものだ!」と思ったりした経験はありませんか?これは大人に なってからもありまして、20代・30代・40代・50代と、年相応の悩みというのは誰でも持っているものなんですね。ただ、世間体を気にして表に出さないだけなんです。

その点子供はストレートなシグナルを送って来ます。口数が少なくなる・食欲がなくなる・顔色が青白くなる・元気がなくなる・ボーッとする・・・etc。そういう時は頭ごなしに「どうしたんだ!?」・「しっかりしろ!」などと云っても効き目がありませんから、男の子は父親が、女の子は母親が「一緒に風呂にでも入ろう!」と誘ってやって、背中をこすりながら、「何か困ったことでもあるのかね?」とやんわり聞いてあげたらどうでしょうか。


大人から見たら誠にたわいないことなのですが、本人は真剣に悩んでいる。大人になると、自分にもそんな時期があったことをすっかり忘れてしまうんですね。子供の目線に合わせるというのは中々難しいものですが、なるべく合わせてあげて、「お父さんが〇〇君だったらきっとこう考えるな」・「お母さんが〇〇ちゃんだったらきっとこうするね」とアドバイスしてあげて 下さい。できれば、後から、似たようなケースを扱った児童文学などをプレゼントしてやったら、子供はみるみる勇気が湧いて来るでしょう。
 
学而第一 013 学而第一 014  学而第一 015
新論語トップへ