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原文
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作成日 2005年(平成17年)7月から9月 |
君召使擯、色勃如也。足躩如也。揖所與立、左右其手。衣前後、襜如也。
趨進、翼如也。賓退、必復命、曰、賓不顧矣。
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〔 読み下し 〕 |
君、召して擯たらしむれば、色勃如たり。足躩如たり。与に立つ所を揖すれば、其の手を左右にす。衣の前後襜如たり。趨り進むには翼如たり。賓退けば必ず復命して日わく、賓顧みずと。
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〔 通釈 〕 |
主君に召されて賓客接待の役目を仰せつかった時は、顔色を引き締め、刻み足で任務につく。賓客を出迎える際に、大門で出会った同僚と挨拶を交す時は、両手を胸元で組み、左右を向いて揖礼するが、衣の裾は乱れることがない。賓客を迎え、小走りして進む時は、両袖が翼を拡げたように美しい。賓客が帰る時には、必ず姿が見えなくなる迄見送りし、その旨を報告した。
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〔 解説 〕 |
この章は賓客を送迎する際の様子を記したものですが、客の姿がみえなくなる迄見送るのが送る側の礼儀、途中何度も振り返って挨拶するのが送られる側の礼儀とされていたようです。今なら、お互いの姿が見えなくなる迄手を振るようなものですね。
松下幸之助さんは、自分を尋ねて来る客があると必ず玄関で出迎え、帰る際にも必ず玄関迄出て客の姿が見えなくなる迄見送ったそうですが、天下の松下幸之助さんにこうされた客は、恐縮する他なかったと云います。幸之助さんが論語のこの章を読んでいたかどうかは分かりませんが、この人の人柄がきっとそうさせたのでしょう。
普段私達は何気無く出迎え・見送りをやっておりますけれども、もっと神経を使ってやった方が良いのかも知れません。出迎えは「始め」であり、見送りは「終わり」ですから、初めと終わり位はきちんと礼を尽くすべきでしょう。「礼で始まり礼で終わる」のが大人の付き合いですからね。
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〔 子供論語 意訳 〕 |
孔子様がお殿様に呼ばれて、客の接待係を命じられた時は、つつましやかに聞き、すみやかに任務についた。お客様を出迎えておじぎをする時は、深々と頭を下げてうややか(礼儀正しいさま)であった。接待する時は、キビキビとまめやかであった。お客様がお帰りになる時は、姿が見えなくなるまで手を振って見送りした。見送ったあと、「お客様は無事お帰りになりました」と殿様に報告した。
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〔 親御さんへ 〕 |
「○○やか」なる日本語は、辞書を引いてみると百種類位あるようですが、中にはこんな言葉があるのか?と思うようなものもある。次の意味分かりますか?
1、なえやか。 2、すがやか。 3、かごやか 4、ずしやか 5、などやか。
答え、
1は、なよなよとしたさま。2は、思い切りの良いさま。
3は、ひっそりとしたさま。4は、ずっしりとしたさま。 5は、おだやかなさま。
「彼は一見するとなえやかに見えるが、実はすがやかな性格で、かごやかな所を好む。普段はずしやかでなどやかな男だ」などと云われても、何のことやらさっぱり訳が分かりませんね。
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