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〔原文〕
子撃磬於衛。有荷簣而過孔氏之門者。曰、有心哉、撃磬乎。既而曰、鄙哉、
硜硜乎。莫己知也。斯已而已矣。深則厲、淺則掲。子曰、果哉、末之難矣。
〔読み下し〕
子、磬を衛に撃つ。簣を荷いて孔子の門を過ぐる者有り。曰わく、心有るかな、磬を撃つこと。既にして曰わく、鄙しきかな、硜硜乎たり。己を知ること莫くんば、斯れ已のみ。深ければ厲し、浅ければ掲す。子日わく、果なるかな。之を難しとする末きなり。
〔通釈〕
孔子が衛に滞在していた時、磬という楽器を打って楽しんだことがあった。その時、もっこを担いで孔子の宿の門を通り過ぎようとした者が、ふと足を止めて、「さても意味ありげな磬の打ち方だわい」と云って聴いていたが、しばらくすると「いかんいかん！未練たっぷりの頑なな奏法で、何とも卑しい響きじゃないか。世間に自分を認めてくれる者がいなかったら、さっさと隠退してしまったら良かろうに。詩経に『川が深ければ着物を脱ぎ、浅ければ裾をからげるがよい』とあるが、人間見切りが肝腎だよ」と云って立ち去った。
これを聞いた門人が孔子に告げると、孔子は「随分思い切りのいい人がいたもんだ。何でもかんでもそう簡単に割り切って生きられるなら、世の中難しいことは何もなかろうよ」と云った。
〔解説〕
磬という楽器は硬い石をへの字型に削った打楽器で、12個を並べて奏するものだったようです。楽器の音色を聴いて奏者の心境を推し測るなんて、一体この人物はどんな人だったのでしょうか？
思い切りが良いというのは、物事を決断する際に欠かせない要素です。未練がましく執着していると益々深みにはまって、にっちもさっちも行かなくなってしまうことがある。どこで見切りをつけるか？事業や商売であれば、利害や損得で青信号・黄信号・赤信号の基準を設けて見切り時を判断すれば良いけれど、利害や損得を超えた人生上の使命や理想となると、そう簡単に見切ったり割り切ったりできるものではありません。
殊に使命を悟った人ともなれば、どんな境遇に遭おうが、全生涯をその使命に捧げることが最大の生き甲斐になりますから、棺桶に入る迄見切り時などというものはない、年の老若を問わず。役職や肩書には潮時・見切り時というものがあるけれども、今世の人生に於ける使命には潮時・見切り時などというものは存在しないんです。一生涯かけて果たさなければならない使命（役目・課題）を、万人が持って生まれて来るんですね。
歯を食いしばってでも、石に噛ついてでも、痩せ我慢してでも、やり抜かなければならない課題は、全員が背負って出て来るんです。ここを勘違いして、商売でもしているかのようにスパッスパッと自分の人生を見切ってしまうと、限りなく薄っぺらな人間になってしまう、味も素っ気もない人物になる。孔子はこういうことを云いたかったのではないでしょうか？「果なるかな。之を難しとするなきなり」と漏らしている。
肉の子人間ならば「ノンデ・クッテ・シテ・ネテ・タレテ・ハイオシマイ！」で良いかも知れないが、神の子人間はそんなことの為に生れて来るのではない！ということです。肉体を持ったからには、少しでも人様のお役に立って来い！世の中の為になって来い！魂を磨いて来い！ということでしょう。
〔子供論語 意訳〕
孔子様が衛という国に滞在していた時、磬という楽器を演奏したことがあった。それを聴いたある人が、「心の状態が演奏にあらわれるというが、この人は何か心にひっかかるものがあるのだろうか？流れのままにサラサラと生きたら楽なのに」といって立ち去った。これを聞いた孔子様は、「流れに流されるまま生きるのならそれは楽でいいだろうが、私は新たな流れをつくりたいと思って頑張っているのだ。人様のつくった流れにながされて生きたって、ちっとも面白くないじゃないか！」とおっしゃった。
〔親御さんへ〕
人生は日々応用問題を解いているようなもので、初めから模範解答がある訳ではありません。Aさんにとっての答えが、そのままBさんに当てはまるとは限りません。何故かと云うと、一人一人すべて違った人生問題集が与えられてるからなんですね。日本には1億2千万通りの問題集、世界には60億通りの問題集、一冊として同じものはありません。
ですから、自分に与えられた問題は、滑ったり転んだりしながら、自分自身で解いて行く他はないんです。血を分けた親子と雖も例外ではありません。本人にしか見えない60億種類のインクで問題集が書かれていますから、親が子に代わって問題を解いてやる訳には行かんのですね。
これの分かっていない親が近頃増えているのではないでしょうか？子供をダメにしている。放ったらかしも良くないが、過干渉はもっと良くない。自分のお腹から生れた子供だからと云って、子は親の所有物ではない、あなたとは別の個性をもった独立した人格（魂）、神様からの預かりものなんです。いいですか？親の作った流れの中でしか生きられないような子に育ててはなりませんよ！？自分で自分の流れをつくれるような子に育てなさい！神様からの預かりものじゃないですか！？
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