子路第十三 334

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〔原文〕
子曰、南人有言。曰、人而無恆、不可以作巫醫。善夫。不恆其徳、或承之羞。
子曰、不占而已矣。

〔読み下し〕
()(のたま)わく、南人(なんじん)()えること()り。()わく、(ひと)にして(つね)なくんば、(もっ)()()()すべからずと。()いかな。()(とく)(つね)にせざれば、(あるい)(これ)(はじ)(すす)めん。()(のたま)わく、(うらな)わざるのみ。

〔通釈〕
孔子云う、「南方の人の諺に『万事行き当たりばったりで恒心のない人は、巫女(みこ)のご託宣も名医の施術も効き目がない』というが、全くその通りだなあ。周易にも『徳の実践に一貫性がなく、その時の気分次第でころころ変わるようでは、いつか辱めを受けることになる』とあるが、これも占い以前の心構えの問題だ!」と。

〔解説〕
そうですか・・・、やはり恒心(一貫してぐらつかない心)のない人はダメですか・・・。心得違いをしておったら、占いが「吉(きち)」と出ようが、神託が「栄(はえ)」と出ようが、幸運は素通りしてしまうということですか?逆説的に云うならば、心得違いさえしていなければ、占いが「凶(きょう)」と出ようが、神託が「衰(すい)」と出ようが、チャンスの女神は微笑むということですね。考えてみれば、我々人間は想いが現実を引き寄せる「波長同通」の法則下にある訳ですから、当たり前といえば当たり前のことかも知れません。

占いのプロはこの点をどう判断しているのか?『五行命理学』を専門に研究している友人にこの章を見せて意見を求めましたら、「ほ〜、孔子がこんなことを云っていたんですか?いや将にこの通りで、心掛けが悪かったらどんなにいい運気も逃げてしまいます。我々は生年月日と生れた時間を元に推命して行く訳だけれども、実は三割くらいは外れることがある。命理学上の判定と現実がかけ離れていることがある。まあ心掛けの善し悪しでどうにでもなるんでしょうな?人間は。へぇ〜、孔子がこんなことを云っていましたか。易経は孔子が編纂したものだと聞いていたけれど、ちゃんと知っていたんですね、こういうことを」との返答でありました。人生善くも悪くも心掛け次第ってことですね。

〔意訳〕
孔子(こうし)(さま)がおっしゃった、「(みなみ)(くに)(ひと)(たち)()(つた)えに
(ひと)はみな(かみ)()だと(しん)じられない(ひと)は、巫女(みこ)さんのお()げもお医者(いしゃ)さんの治療(ちりょう)もききめがない』 というものがあるが、これ本当(ほんとう)のことなんだよ。(うらな)いに(おこ)ないにしまりがなく、その(とき)気分(きぶん)しだいで行動(こうどう)する(ひと)は、(あと)(いた)()にあう』 というものもあるが、これも自分(じぶん)()いた(たね)自分(じぶん)()りとらなければならないという、原因(げんいん) 結果(けっか)法則(ほうそく)のことをいっているんだね」と。


〔親御さんへ〕
最近は占いの株式会社があるそうで、知人の紹介で、ある時占い会社の営業部長という二十代の男性が尋ねて来ました。どんなことをやっているのか?聞いてみましたら、占いのイベント企画・出張鑑定・開運グッズの販売・開運教室・占い居酒屋・占いレストラン・ショッピングセンターの占いコーナー等々、様々なことをやっていると云う。

客層は?と問うと、若い女性が圧倒的。鑑定の値段は?と問うと、20分で3000円位。儲かるのか?と問えば、赤字です!と云う。この仕事を選んだ理由は?と聞きますと、「困っている人の『お悩み解決』のお手伝いが出来れば」との返事。

誠に立派な動機で云うことはないのですが、「君は困っていないのか?」と問いますと、「困ってます!収入が少ないのが悩みです!!」と云うではありませんか。「じゃあさっきの理由はウソじゃないのか?」と申しますと、「何故ですか?」と云う。「盲が盲の手を引ける訳がないだろう?」と云うと、ピーンと来たようで、「そうですよね、これって自己欺瞞ですよね!?でも悪いことですか?」と問い返す。

「善悪の前に、君自身が自己矛盾を起こしていないか?水が高きから低きに流れるように、エネルギーも高い方から低い方へと流れる。運気もエネルギーの一種だから、占う方のエネルギーが占われる方のエネルギーより低いとすれば、客の運気(エネルギー)を吸い取って、その上金銭まで吸い取ることになる。エネルギー(運気)を与えて対価を受け取るのなら分かるが、エネルギーを奪っておいて対価まで受け取るとなると、これは立派な詐欺だろう!?ビジネスはギブ&テイクが原則。ギブ&ギブはボランティア、テイク&テイクは詐欺だろう!」と云いましたら「是非うちの開運教室の講師をやってくれ!」と来た。

柄にもないので、「長岡の殿町に開運というバーがある。そこのママ暇そうだから、何なら紹介してやるよ」と云ったら、そそくさと帰って行きました。後日この件を開運のママに話しますと、「やるやる!講座の名前を『衰運』に変えてくれれば。今度店の名前を『衰運』にしょうと思てるがぁて!!」とヘンなことを云い出すので、「それは椿さんに相談してから決めなさい」と答えておきました。
 

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