子路第十三 335

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〔原文〕
子曰、君子和而不同、小人同而不和。

〔読み下し〕
()(のたま)わく、君子(くんし)()して(どう)ぜず、小人(しょうじん)(どう)じて()せず。

〔通釈〕
孔子云う、「君子(出来た人物)は、調和を心掛けるが付和雷同することがない。これに反して小人(下らない人物)は、付和雷同するが調和することがない」と。

〔解説〕
和同○○或は同和○○と、和同や同和を社名に使っている会社が結構あります。ちょっと前の話しになりますが、論語の講演を頼まれた際に世話役の方々と名刺交換したら、偶然にも和同(株)と(株)同和という会社の社長がおられた。二人とも論語のこの章から採って付けた社名だと自慢げに云うので、「和同も同和も論語とは何の関係もありませんよ」と答えると、エーッ?と云ったきり目が点になってしまった。講演が終わり懇親会になると、早速二人がやって来て「どうしてだ?」と云って酒を飲ませてくれない。「教えてやったらヘネシーおごるか?」と云うと、「お安いご用!」と来た。

和同も同和も元来とてもいい言葉です。和同とは「天地和同・上下和同」という垂直方向の調和、同和とは「同胞一和」という水平方向の調和の意。しかし残念ながら論語のこの章では、和は調和の良い意味に使われているが、同は付和雷同の悪い意味に使われている。

どうしても社名をこの章から採ったと言い張るのであれば、和同(株)さんは「調和するが時には付和雷同もする」というオカシナ社名になるし、(株)同和さんは「付和雷同するが時には調和もする」というヘンテコな社名になる。和同も同和もそれ自体大変いい意味なのだから、無理して論語から採ったなどと云わん方が良い。いいですか?てな訳でヘネシー一本頂き!と相成りました。この日の酒は格別に旨かったですなあ!

このホームページをご覧の方の中にも、和同○○や同和○○を社名に使っている会社の方がおられるかも知れませんが、論語から採ったなどと云わん方がいいですよ!?そのうちヘネシーもらいに行きますからね!!

〔意訳〕
孔子(こうし)(さま)がおっしゃった、「君達(きみたち)()大切(たいせつ)にしなさい!(おれ)(おれ)(わたし)(わたし)がと、()()ってはいけません!!」と。

〔親御さんへ〕
小五の孫に「和」の意味が分かるか?と聞くと、「仲良くすること」と云うし、「我を張る」の意味は?と問うと、「意地っ張りのこと」と答えましたので、それなりに分かっているようです。「和」には、おだやか・なごやか・のどか・あわせる・そろえるの他に、「日本(大和)」の意がある。和服・和船・和歌・和菓子・和食・和紙・和算・和室等々、日本式や日本風を表す言葉がものすごく多い。

これは、古来からの文物に漢や洋などからの渡来の文物をハイブリッドして、日本独自のスタイルつまり、ジャパニーズスタンダードを生み出して来たという、日本文明の言語学面からの証明ではないでしょうか?

そうですねえ・・・、一番身近な食べ物で云えば、普段私達が洋食や洋菓子と思っているものは、海外旅行でフランスやイタリアに行って現地のスタンダードを食べてみると、似て非なる日本独自のものであることが分かる。

中国家庭料理の代表選手「餃子」をみても、日本では焼き餃子が当たり前と思っているけれども、本場中国では茹でて食べる水餃子が当たり前、焼き餃子は前日の残り物を温めて食べる時だけ、つまり、残飯処理のようなもの。

実は餃子には私も苦い思い出がありまして、今から30年程前、皆さんもよく知っている高雄の許さんが初めて来日した際、全国の戦友をあちこち訪ねた後新潟に来ました。顔を見たらひどくムクんでいる。びっくりして病院に連れて行くと、医者は食物アレルギーのじんま疹だと云う。「何を食ったんだ?」と聞きますと、連日、刺身・天ぷら・寿司・鰻・ふぐ・すっぽん・鯉・鮎・ウニ・鮑等の和食でもてなされ、グロッキーになったと云う。

じゃあ今夜は餃子でも食いながら紹興酒を飲むか!となって、ことぶき屋に連れて行きましたが、出された焼き餃子を見てプーッと脹れっ面をするではないですか!?「何を怒っているんだ?」と問うと、「俺に残り物を食わす気か!?」と云われて、しまった!日本スタイルを説明していなかった!?と気付き、「これは残りものではなくて、日本では出来たてのものを焼いて食べるのだ!」と説明してもまだ脹れている。

仕方がないので、調理場に連れて行って、竹ヶ原さんに実演してもらったらやっと納得。食べてみれば香ばしくて水餃子より旨いものですから、食うわ食うわ、確かあの時は一人で六皿(36ヶ)位平らげたのではなかったかな?ああ許さんは旧陸軍高雄航空隊の整備兵だった方で、今年で79才になるかな?勿論ピンピンしていますよ。
 

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