為政第二 034

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原文                    作成日 2003年(平成15年)5月から7月
子張干祿。子曰、多聞闕疑、言其餘、則寡尤。多見闕殆、行其餘、
則寡悔。言寡尤、行寡悔、祿在其中矣。
 
〔 読み下し 〕
()(ちょう)(ろく)(もと)めんことを(まな)ぶ。()(のたま)わく、(おお)くを()きて(うたが)わしきを()き、(つつ)しみて()(あま)りを()えば、(すなわ)(とがめ)(すく)なし。(おお)くを()(あやう)きを()き、(つつし)みて()(あま)りを(おこ)なえば、(すなわ)(くい)(すく)なし。(ことば)(とがめ)(すく)なく、(おこ)ないに(くい)(すく)なければ、(ろく)()(うち)()り。
 
〔 通釈 〕

弟子の子張が仕官(就職)して俸禄(給料)を得るにはどうしたら良いかを質問した。孔子は、「まずは見聞を広めることだが、多くのことを聞いた上で、疑わしいことを取り除いて確実な事だけを慎重に云えば、人から非難されることが少ないだろう。多くのことを見た上で、危なっかしいものを取り除いて確実なことだけを慎重に行なえば、後悔することが少ないだろう。

言葉に非難される所がなく、行ない後悔することがなければ、あの男は信用できる!となって、仕官の口は向こうから転がり込んで来るものだ」と答えた。
 

〔 解説 〕

子張とは孔子の弟子で、出しゃばってやり過ぎる傾向があったようです。子張は押出しも立派で堂々としていたようですが、孔子に「何事も慎重にやれ!」と諭されていた所を見ますと、多分に早合点して独り善がりになる欠点があったのでしょう。

人には誰でも長所もあれば欠点もあり、強みもあれば弱点もあります。孔子は同じ弟子に対して、褒めたり・叱ったり・諭したりしておりますが、これが人を育てる王道なんですね。

「長所を伸ばせば欠点は消える」などという無責任なプラス発想は、これっぽっちもなかったようです。長所を伸ばしても欠点は消えないんですよ。一時隠れているだけなんです。「長所を伸ばせば欠点は消える!」とばかりに、いつ迄も臭いものに蓋をしておきますと、四十過ぎると異臭を放ち始め、五十過ぎると悪臭を撒き散らすことになるんですね。

当の本人は気付かずに。欠点は放っておいて消えるものではありません。矯め直さないとダメなんですね。
孔子はこういうことを実に良く知った人でした。
 

〔 一言メッセージ 〕

『長所を伸ばしても欠点は消えない。長所は放っておいても伸びるが、
   欠点は矯め直さないと消えない』
 

〔 子供論語  意訳 〕
弟子(でし)()(ちょう)が、安定(あんてい)した収入(しゅうにゅう)()るにはどうしたら()いかを質問(しつもん)した。孔子(こうし)(さま)は、「(わか)いうちに(おお)くのことを見聞(けんぶん)()たり()いたり】して、知識(ちしき)経験(けいけん)豊富(ほうふ)(たくわ)え、(たくわ)えた知識(ちしき)経験(けいけん)(なか)から実際(じっさい)(やく)()ちそうなものを慎重(しんちょう)(えら)んで実行(じっこう)してみる。こうすれば失敗(しっぱい)することが(すく)なくなる。失敗(しっぱい)することが(すく)なくなれば、(ひと)信用(しんよう)してくれる。(ひと)信用(しんよう)してもらえれば、段々(だんだん)重要(じゅうよう)仕事(しごと)(まか)されるようになる。重要(じゅうよう)仕事(しごと)着実(ちゃくじつ)にこなして()けば、徐々(じょじょ)自信(じしん)()いて()る。自信(じしん)()いて()れば、(まわ)りの(ひと)様々(さまざま)なアドバイスが出来(でき)るようになる。アドバイス(どおり)りにやったらうまくできたとなれば、(みな)信頼(しんらい)()せる。つまり、あの(ひと)()うこととやることに間違(まちが)いはない! と(みと)めてもらえれば、(まわ)りの(ひと)(たち)から信用(しんよう)され【(しん)(もち)いられ】→ 信任(しんにん)され【(しん)(まか)され】→ 信頼(しんらい)される【(しん)(たよ)られる】こととなる(わけ)だ。こうなれば、給料(きゅうりょう)()がりこそすれ、()がったなどという(はなし)しは()いたことがない。(あた)えられた課題(かだい)(ひと)(ひと)着実(ちゃくじつ)にこなして()く。これがチャンスを()()秘訣(ひけつ)なんだね」とおっしゃった。
 
〔 親御さんへ 〕

人が人に無条件・無前提で信じてもらえる、信じてやれるというのは、普通は、親子の関係・男女の関係位のものではないでしょうか。それ以外は、何らかの前提があったり、条件がついていたりするものですね。

信とは人+言で、元々は言(げん)を違えない・約束を裏切らないの意ですが、言を違えず約束を裏切らない人物と分かって初めて人に信用してもらえる・信じ用いてもらえることになります。

信用されて更に言を違えず約束を裏切らない人物であると認めてもらえると、段々に重要な仕事を任される・信じ任される(信任)ようになります。信任されて着実に結果を出して行くと、自信がついて来ると同時に、周りから頼られる・信じ頼られる(信頼)存在となって行きます。(信任と信頼は前後することもある)

このように、第三者との間で信頼関係を築き上げるというのは、並大抵ではない訳ですが、築き上げてからこの信頼関係を維持するのが、又一苦労なんですね。好い加減なことをすれば、一瞬で信頼関係は崩れてしまいますから。人として生きて行くうえで、誠実(信頼を裏切らない)ということは、何よりの財産です。

こういう面から、百年二百年と続いている老舗には、本当に頭が下がります。この間ずーっと誠実であったことの証(あかし)ですからね、続いているということは。単に商売上手というだけではもたないんですよ、百年も。誠実であるからこそ、創意工夫・改良改善を繰り返して、顧客の期待を裏切らないよう努めているんですね。お店の看板は、「当店はお客様の期待を裏切りません!」という宣誓書を掲げているようなものなんですよ。これがブランドロイヤリティを生むんです。

今度戦前から続いている老舗に買物に行く機会があったら、「誠実・客の期待を裏切らないかどうか?」の視点で観察してみたらいかがでしょうか。誠実なだけで繁盛するとは限りませんが、誠実でなかったら確実に潰れます。皆さんの中にもドキッ!とした人がいたようですね
 

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