〔
原文
〕
作成日 2003年(平成15年)5月から7月 |
子張學干祿。子曰、多聞闕疑、愼言其餘、則寡尤。多見闕殆、愼行其餘、
則寡悔。言寡尤、行寡悔、祿在其中矣。
|
〔 読み下し 〕 |
子張、禄を干めんことを学ぶ。子曰わく、多くを聞きて疑わしきを闕き、慎しみて其の余りを言えば、則ち尤寡なし。多くを見て殆きを闕き、慎みて其の餘りを行なえば、則ち悔寡なし。言に尤寡なく、行ないに悔寡なければ、禄は其の中に在り。
|
〔 通釈 〕 |
弟子の子張が仕官(就職)して俸禄(給料)を得るにはどうしたら良いかを質問した。孔子は、「まずは見聞を広めることだが、多くのことを聞いた上で、疑わしいことを取り除いて確実な事だけを慎重に云えば、人から非難されることが少ないだろう。多くのことを見た上で、危なっかしいものを取り除いて確実なことだけを慎重に行なえば、後悔することが少ないだろう。
言葉に非難される所がなく、行ない後悔することがなければ、あの男は信用できる!となって、仕官の口は向こうから転がり込んで来るものだ」と答えた。
|
〔 解説 〕 |
子張とは孔子の弟子で、出しゃばってやり過ぎる傾向があったようです。子張は押出しも立派で堂々としていたようですが、孔子に「何事も慎重にやれ!」と諭されていた所を見ますと、多分に早合点して独り善がりになる欠点があったのでしょう。
人には誰でも長所もあれば欠点もあり、強みもあれば弱点もあります。孔子は同じ弟子に対して、褒めたり・叱ったり・諭したりしておりますが、これが人を育てる王道なんですね。
「長所を伸ばせば欠点は消える」などという無責任なプラス発想は、これっぽっちもなかったようです。長所を伸ばしても欠点は消えないんですよ。一時隠れているだけなんです。「長所を伸ばせば欠点は消える!」とばかりに、いつ迄も臭いものに蓋をしておきますと、四十過ぎると異臭を放ち始め、五十過ぎると悪臭を撒き散らすことになるんですね。
当の本人は気付かずに。欠点は放っておいて消えるものではありません。矯め直さないとダメなんですね。孔子はこういうことを実に良く知った人でした。
|
〔 一言メッセージ 〕 |
『長所を伸ばしても欠点は消えない。長所は放っておいても伸びるが、
欠点は矯め直さないと消えない』
|
〔 子供論語 意訳 〕 |
弟子の子張が、安定した収入を得るにはどうしたら良いかを質問した。孔子様は、「若いうちに多くのことを見聞【見たり聞いたり】して、知識や経験を豊富に蓄え、蓄えた知識や経験の中から実際に役立ちそうなものを慎重に選んで実行してみる。こうすれば失敗することが少なくなる。失敗することが少なくなれば、人が信用してくれる。人に信用してもらえれば、段々重要な仕事を任されるようになる。重要な仕事を着実にこなして行けば、徐々に自信が付いて来る。自信が付いて来れば、周りの人に様々なアドバイスが出来るようになる。アドバイス通りにやったらうまくできたとなれば、皆が信頼を寄せる。つまり、あの人の云うこととやることに間違いはない!
と認めてもらえれば、周りの人達から信用され【信じ用いられ】→
信任され【信じ任され】→ 信頼される【信じ頼られる】こととなる訳だ。こうなれば、給料は上がりこそすれ、下がったなどという話しは聞いたことがない。与えられた課題を一つ一つ着実にこなして行く。これがチャンスを呼び込む秘訣なんだね」とおっしゃった。
|
〔 親御さんへ 〕 |
人が人に無条件・無前提で信じてもらえる、信じてやれるというのは、普通は、親子の関係・男女の関係位のものではないでしょうか。それ以外は、何らかの前提があったり、条件がついていたりするものですね。
信とは人+言で、元々は言(げん)を違えない・約束を裏切らないの意ですが、言を違えず約束を裏切らない人物と分かって初めて人に信用してもらえる・信じ用いてもらえることになります。
信用されて更に言を違えず約束を裏切らない人物であると認めてもらえると、段々に重要な仕事を任される・信じ任される(信任)ようになります。信任されて着実に結果を出して行くと、自信がついて来ると同時に、周りから頼られる・信じ頼られる(信頼)存在となって行きます。(信任と信頼は前後することもある)
このように、第三者との間で信頼関係を築き上げるというのは、並大抵ではない訳ですが、築き上げてからこの信頼関係を維持するのが、又一苦労なんですね。好い加減なことをすれば、一瞬で信頼関係は崩れてしまいますから。人として生きて行くうえで、誠実(信頼を裏切らない)ということは、何よりの財産です。
こういう面から、百年二百年と続いている老舗には、本当に頭が下がります。この間ずーっと誠実であったことの証(あかし)ですからね、続いているということは。単に商売上手というだけではもたないんですよ、百年も。誠実であるからこそ、創意工夫・改良改善を繰り返して、顧客の期待を裏切らないよう努めているんですね。お店の看板は、「当店はお客様の期待を裏切りません!」という宣誓書を掲げているようなものなんですよ。これがブランドロイヤリティを生むんです。
今度戦前から続いている老舗に買物に行く機会があったら、「誠実・客の期待を裏切らないかどうか?」の視点で観察してみたらいかがでしょうか。誠実なだけで繁盛するとは限りませんが、誠実でなかったら確実に潰れます。皆さんの中にもドキッ!とした人がいたようですね
|