雍也第六 138

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原文                   作成日 2004年(平成16年)4月から7月
子曰、質勝文則野。文勝質則史。文質彬彬、然後君子。
 
〔 読み下し 〕
()(のたま)わく、(しつ)(ぶん)()てば(すなわ)()(ぶん)(しつ)()てば(すなわ)()文質(ぶんしつ)(ひん)(ぴん)として、(しか)(のち)君子(くんし)なり。
 
〔 通釈 〕
孔子云う、「中身(質実)が外見(文飾教養)より勝った者を野(野暮ったい)と云い、外見が中身より勝った者を史(スタイリスト)と云う。外見と中身がバランス良く調和しているのが、本当の君子(紳士)である」と。
 
〔 解説 〕
中身さえしっかりしていれば、外見はどうでもいい!という人がいるかと思えば、中身を疎かにして、外見ばかり気にする人もいる。孔子は、中身か外見か?ではなくて、中身も外見も!だと云う。ここで云う君子とは、ジェントルマン(紳士)と解して良いでしょう。質と文の関係を図示してみると

     
 
〔 子供論語  意訳 〕
孔子(こうし)(さま)がおっしゃった、「中身(なかみ)充実(じゅうじつ)しているが外見(がいけん)()にかけない(ひと)は、どこか野暮(やぼ)ったい(田舎(いなか)くさい)。(ぎゃく)に、中身(なかみ)()ったらかしで外見(がいけん)ばかり()にしている(ひと)は、どこか(たよ)りない((うす)っぺら)。中身(なかみ)外見(がいけん)両方(りょうほう)(みが)いてこそ、本当(ほんとう)のジェントルマンといえるんだね」と。
 
〔 親御さんへ 〕
ジェントルマンなどという言葉は、最近あまり聞かれなくなりましたが、外見ばかり気にして中身を顧みない、軽薄な時代思潮のせいでしょうか。ジェントルマンとは、礼儀正しく名誉を重んじる男性のことですから、日本で云えば「武士道」、イギリスで云えば「騎士道」に通じます。

私達が人と接触して、「この人は気品があるな!?」と感じる場合、どのような所に目を付けているかと云うと、殆ど意識せずに三つ位の物差しで見ている。

   その一は「応対辞令」のしっかりした人か?
   その二は「出処進退」のきれいな人か?
   その三は「反省改過」の真摯な人か?

その中でも、初対面で分かってしまうのが「応対辞令」(応対接遇の際の言葉づかいや態度)ですから、ここがしっかりしていないと、どんなに中身が立派でも「こりゃダメだ!」となって疎んじられるか侮られるかしてしまう。

つまり、大変に損をしてしまう。為政第二(026章)で孔子の人物鑑識法を紹介致しましたが、その冒頭に「其の以(な)す所を視(み)」とあるように、まず言葉づかいや態度を見るというのが定石なんですね。ですから、文質彬彬・外見も中身も、バランスよく調和していることは重要なんです。
 
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