雍也第六 123

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原文                  作成日 2004年(平成16年)4月から7月
哀公問、弟子孰爲好學。孔子對曰、有顔回者好學。不遷怒、不貳過。
不幸短命死矣。今也則亡。未聞好學者也。
 
〔 読み下し 〕
哀公(あいこう)()う、弟子(でし)(たれ)(がく)(この)むと()す。孔子(こうし)(こた)えて(のたま)わく、(がん)(かい)なる(もの)()り、(がく)(この)めり。(いか)りを(うつ)さず、(あやま)ちを(ふたた)びせず。不幸(ふこう)短命(たんめい)にして()せり。(いま)(すなわ)()し。(いまだ)(がく)(この)(もの)()かざるなり。
 
〔 通釈 〕
魯の哀公が、「弟子の中では誰が一番学問好きですか?」と尋ねた。孔子は「顔回という者がおりまして、学問好きでありました。この者は、腹を立てても八つ当たりすることがなく、同じ過ちを二度と繰り返すこともありませんでした。しかし不幸にも若死にしてしまいまして、今はもうこの世にはおりません。これ以外に学問好きという者はまだ見当たりません」と答えた。
 
〔 解説 〕

孔子の云う学問とは、知識を詰め込んで物知りになることでも、万巻の書物を読んで利口になることでもなくて、学んだことを身に養い修め、実践に生かして徳を磨くことを以て真の学問と考えていたようです。

顔回は孔子より30才若く、41才で亡くなっておりますが、入門する前は、案外怒りっぽくてそそっかしい性格だったのかも知れません。学問によって、己を矯め直して行ったのでしょう。生まれつき温厚で慎み深かったら、敢て「学を好めり。怒りを遷さず、過ちを弐びせず」などとは云わんでしょう。
 

〔 子供論語  意訳 〕
()殿様(とのさま)哀公(あいこう)が「弟子(でし)(なか)(だれ)一番(いちばん)勉強(べんきょう)()きですか?」と質問(しつもん)した。孔子(こうし)(さま)は、「(がん)(かい)という(もの)がおりまして、この生徒(せいと)一番(いちばん)勉強(べんきょう)()きでした。(もと)(おこ)りっぽくてそそっかしい()でしたが、一所懸命(いっしょけんめい)努力(どりょく)して、(こころ)(ひろ)()()いた性格(せいかく)()わって()きました。しかし残念(ざんねん)ながら41(さい)(わか)()くなりまして、(いま)はもうこの()にはおりません。(がん)(かい)くらい勉強(べんきょう)()きな生徒(せいと)は、(いま)(ところ)見当(みあた)りませんと(こた)えた。
 
〔 親御さんへ 〕
怒りっぽい性格の人は早死にすると云いますが、これは科学的にも証明されています。今から半世紀程前に、ワシントンのエルマーゲイツという医学博士が、怒っている人の吐く息を硝子管に集めて、マイナス118度の液体酸素で冷却して液化させ、これをモルモットに注射してどの様な反応が起きるかを実験した。

注射するとモルモットは急に神経過敏になり、数分後には検体すべてが死んでしまった。どれ位の毒性があるのかを調べてみたら、何とふぐ毒の80倍もあることが分かった。つまり、怒りっぽい人は、自分の怒気から生成される猛毒で免疫細胞が破壊されてしまう為、感染症にかかり易くなるということいですね。

怒っている本人だけが、自家中毒で死んでしまうのは勝手ですが、吐く息として・唾として周りに撒き散らしている訳ですから、側にいる人はたまったものではない。感染してしまいますから、まあ怒りっぽい人には近づかない方がいいでしょう。自分が怒りっぽい性格だと自覚している人は、笑いの練習でもして矯正する他はないでしょう、長生きしたければ。
 
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